イラスト 心臓とメス
病気と手術について

病気と手術について

動脈管開存症

病態と症状

動脈管とは大動脈と肺動脈をつなぐ太い血管で、胎生期(生まれる前)の胎児循環において重要な役割を果たしています。
通常では、生直後から呼吸開始と共に、血液中の酸素飽和度が上昇すると、動脈管は収縮し、数週間以内に閉鎖してしまいます。
この閉鎖が不完全な場合、「動脈管開存症」となります。
動脈管開存症では、(圧力の高い)大動脈から(圧力の低い)肺動脈へと血液が流入します。
太い動脈管では、心臓に負担がかかり(心不全)、また肺血流が増加するため肺うっ血による多呼吸や呼吸負荷、肺高血圧などを生じます。
細い場合はそのような症状は生じませんが、感染性心内膜炎のリスクがあります。

手術治療

原則として治療が必要です。
治療はカテーテルによる閉鎖術と手術による閉鎖術があります。
手術の場合は、左側開胸を行い、左肺を圧迫して視野を確保して、動脈管を糸や金属クリップを使用して閉鎖します。
大人になると動脈管が石灰化(カルシウムの付着)によって硬く、また脆くなってしまうことが多く、糸や金属クリップで閉鎖する際に破れる危険が高くなるので、人工心肺を使用して行うこともあります。

*肺高血圧とは?

肺へと血液を送る肺動脈の圧力が高くなった状態で、心エコー検査やカテーテル検査で診断します。
正確には、平均肺動脈圧が25mmHg以上と定義されます。
先天性心疾患の分野では、肺血流増加疾患(動脈管開存症や心室中隔欠損症など)で起こりやすく、また21トリソミー(ダウン症)では特に注意が必要です。
この肺高血圧は、徐々に進行し、長期に放置すると、最終的に体動脈圧を超える状態(アイゼンメンジャー症候群)となり、こうなると治療できなくなります。
このため肺高血圧と診断された場合は、その進行を抑えるためにも、早期の治療介入が必要です。

*感染性心内膜炎とは?

血液中に入ってきた細菌が心臓の内膜に付着し、感染巣を作ることです(心臓弁に感染することが多いです)。
発熱や易疲労感、体重減少、発汗など様々な症状が現れ、心臓や血管内に細菌の塊(疣贅)を作ったり、心臓弁を破壊したりします。
逆流などの異常がある弁や人工弁を持っていたり、先天性心疾患のため、異常な血液の通路がある場合などでは、正常と比べて起こりやすくなります。
抗生物質の点滴により治療しますが、抗生剤の効果がなかったり、弁の破壊が進んでしまったり、疣贅が大きい場合などは外科手術が必要となります。